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マイナスの質量を持つ!? -フロジストン説-

マイナスってなんだろう

突然ですが皆さん、「マイナス」という概念について深く考えたことはありますか?
では、まず手始めに身近な数字全部にマイナスをつけてみましょう。

〜〜-8月-3日。今日は最高気温-30度となる真夏日だ。今日はぼくの-10歳の誕生日。身長を測ったら-150cmになっていて、嬉しかった。〜〜

どうみてもおかしな文章で、まるで馬鹿にされているように思ってしまいますね。ここで、あることに気付きませんか?
”-30度”という表現は実際に存在するものです、ちょうど北極の冬くらいの気温ですね。
一方-8月や-10歳、-150cmなどはちょっと考えにくいのではないでしょうか。というか考えることができませんね。「肌年齢-5歳!」や「ウエストマイナス10cm!」などの宣伝文句は聞いたことがある方も多いと思いますが、このような前後の変化を表す場合でないとき、一般的には年齢や長さについてマイナスを考えることはできません。これはマイナスは減らすという動作的な意味や定まった方向と逆向きに働くなどの意味を持ち、モノ自体の情報を示す時にはあまり使われないことに起因します。

マイナスをそのままの情報として持ちうる摂氏温度は珍しいように感じます。これは基準が水の融点によって定義づけられており、モノが存在しうるかという部分に基準が置かれていないため、マイナスを考えることができます。モノが理論的にとりうる最低温度-237℃のことを0とする絶対温度[K]では、重さや長さ同様一般的にはマイナスを考えることができません。

そしてもちろんこれは質量についても同じです。(質量とはモノそのものが持つ量のことで、これを重力とともに考えたものが重さです。重さは地球で量るか月で量るかによって変わってしまいますが、質量はどこでも同じ値を示します。)
あらゆるモノには必ず質量があります。靴やコーラ、もちろん空気にもです。

では、もしもマイナスの質量があるとしたらどのようなことが起こるでしょう。重力が逆に空の彼方へ飛んでいってしまうのでしょうか?

想像したら少し面白いかもしれませんが、よく考えるとおかしなことになってしまいます。質量があるということがそのもの自体が存在しているということを裏付けるので、質量がないということはそのモノ自体がないということ、マイナスの質量をもつということはそれが他の質量あるモノから質量を奪うはたらきを持っていることになります。
ちなみに空に浮かび上がる風船は質量がないのではなく、地表を覆っている空気よりも風船の中を満たす物質の質量が小さいため、浮力がはたらいているのです。わかりやすく言えば空気よりも軽いから浮かび上がるということです。

フロジストン説

金属を燃焼させると空気中の酸素と結びついて酸化物となり、質量が増加します。下は銅を空気中で燃焼させた時の反応です。銅が酸化銅になる過程で結合した酸素の分質量が増加することがわかります。

2Cu + O2 → 2CuO
銅(赤褐色)  酸素(無色) 酸化銅(黒色)

これは中学校の理科の授業で習いますね。常識という言葉はあまり好きではないのですが今ではそういうことになるでしょう。しかしながら現代の燃焼反応が確立されるまで、燃焼については様々な説が考えられてきました。

そのうちの一つがフロジストン説です。

フロジストン説 phlogiston theory は17世紀後半にドイツのシュタールによって提唱されました。その内容は、

「金属からマイナスの質量を持つフロジストンという物質が放出されることによって、反応後の質量が増加する」

というものです。

金属 ー フロジストン  金属灰
(マイナスの質量を持つ)

つまり、マイナスを引くとプラスになるということですね。なぜ単純に「プラスの質量を持つ空気中の物質が結合した」のではなく、フロジストンという仮想物質と複雑な考えが生み出されたのでしょうか。
地球上では燃焼の際、炎は上に上がります。これは、暖められた空気によって上昇気流が発生するためです。
もしかするとこの性質が当時の科学者を悩ませた元凶かもしれませんね。

フロジストン説の否定

フロジストン説は18世紀半ばまで、多くの科学者に受け入れられていました。しかし、フランスのラボアジエがフロジストン説に疑問を持ち、質量保存の法則を発見しました。また同年、イギリスのプリーストリーによって酸素が発見されました。これらの出来事から、フロジストン説は否定され、酸素が結びつく燃焼反応が考えられるようになったのです。

質量保存の法則とは「物質の化学変化の前後で質量のは等しくなる」というものです。気体発生による質量の減少を考えるには、密閉した容器の中で反応を起こす必要があります。フロジストンに関する質量を調べる研究は多くの科学者の間で行われていたと考えられますが、フロジストン説自体が燃焼が関係するものだったため、密閉して研究を行うことが難しかったのではないでしょうか。フロジストン説に疑問を抱いたラボアジエだからこそ発見することができた法則なのかもしれませんね。
最後に
今ではあたりまえのように考えられていることでも、時代が違えば、膨大な時間と資金がかけられた研究対象であったり、ましてや全く研究対象でなかったりすることばかりです。もちろん同じ現代でも、居住する地域や社会環境によって全く違う考え方がされているものが多くあります。今回紹介した燃焼の反応でさえも、数百年後、いや数十年後には否定されて新たな説が生み出されているかもしれません。
今、目の前で起こっていることはなぜそうなったのか。自分が今まで知識として持っていたものは本当に正しいものなのか。たまに立ち止まって考えてみると思いがけない発見があるかもしれませんね。ひとりひとりの「なぜ?」の気持ちこそが研究者の第一歩です。

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