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2章_伸一議事録

ぼっと空を見上げる。最近は一人で物思いにふける時間が増えた。しかし、こんなことをしている場合ではない。高校三年生の夏が来る。つまり、受験戦争が始まるのだ。

 

二週間前、部活を引退した。県大会準々決勝、ここを勝てば県の決勝リーグに進出できる。そしてこれを突破すれば部活をしている高校生、いや、全高校生が憧れる全国大会だ。このために、その舞台に立つために自分ができるだけの多くを傾けた。しかし、それに似合うだけ劇的ではなかった。最終スコアは78対89。安西先生が不在なわけでもなく、キセキの世代のガングロ男に圧倒されるわけでもない、互いが全力で戦い、その結果得たのは実力差に裏打ちされた順当な敗北だった。負けた悔しさより、三年間やり切った達成感からくるひとしおより、なにかずしりとのしかかる虚無感が鼠色に薄く広く、梅雨の雲のように残った。

 しかし本当にこんなことをしている場合ではないのだ。部活を引退してできた長い長い放課後をこんな風に浪費している場合ではないのだ。だから今日は本屋さんに行ってみるのだ。これは傍から見れば小さな一歩だが、今まで勉強から逃げていた僕にとっては大きな一歩だ。それこそ月に行くくらいに。入る。受験コーナーを探す。まず目に飛び込むのは、赤本だ。いわゆる大学ごとの過去問集。立ち並ぶ量に圧倒される。まるで赤い壁だ。この壁を前にどうすればいいのだろうか、超えればいいのか、壊せばいいのか、諸葛亮孔明よろしく火でもつければいいのかそれすら分からない。隣のコーナーには、通常の参考書や問題集が立ち並ぶ。聞いたことのある単語帳や数学の問題集、「これ一冊で総復習!」、「志望校まで最短で!」などが表紙に太字で書いてある割に薄い参考書。またその隣には資格や就職についての書籍が立ち並び、そこからさらに奥に進めば「自分らしく生きる」「スローライフの勧め」「タスクフォーカス」などと書かれた、巷でよく聞く日本語と、聞きなじみのない横文字があふれる自己啓発本コーナー。脳を湯煎で溶かされている感じがした。

 「伸一…くん?」

 呼ばれて脳は形を取り戻した。

 

 クラスメイトの絵馬だ。

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受験の目標は、もちろん合格です。ですが、受験を通じて得られるものは志望校の学生証だけではありません。「やればできる」その自信こそが受験で得られる最高の宝です。「やらなくてもできる」「なんとかなる」そういった過信を捨て、「やればできる」「なんとかする」そういった自信を持つ。どんな困難にも前向きに取り組む事が出来る本当の意味での強い人になってほしいと、SIEGは願っています。

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