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ゴウカク編_第1章_ひび

焼き鮭と納豆、おひたしに玄米。そして味噌汁。色々と試したが、この組み合わせの朝食が自分には合っているようだ。旬を迎えたたけのこが味噌汁とよく合う。食器を洗ったら、いつも通りスーツに着替え姿見を確認する。

(よし。今日も教師だ。)

実のところ、決して自炊が好きなわけではない。皿洗いだって、今はやらずにいて未来の自分に託してしまえたらどんなに楽だろうか。

 

だがゴウカクという男はその選択をとらない。結局のところ、やるべきことをやるべき時にきちっとやってさえいれば人生に間違いはないのだ。これはゴウカクが30年間の人生で学んだ処世術の一つだった。

「教師は、いつだって教師然としていることが大事だ。」

高校時代通っていた学習塾の恩師の言葉だ。

ゴウカクはこの人物を心から尊敬していた。
最近お会いしていないが、変わらず教壇に立たれているのだろうか。
そんな事を考えながらマンションの部屋を出る。

オートロックの鍵が閉まったのを確認すると、学校に向けて歩き出した。

 

職員室に入り、いつものごとく先生たちと挨拶を交わす。

恐らく私は周りから堅物だと思われているのであろう。

いや、人の本質とは他者からの認識によって形成されるものだ。だからこそいつだって教師然としていなくてはいけない。正しくあらなければいけない。その観点に立つと、とうに私は堅物なのだ。

 

高校生は時に眩しい。思い思いの夢を語り、感情に素直に動く。自分の偏狭頑固な生き方を「正解」として生徒に伝えるつもりは毛頭なかった。

 

放課後、担当している三年生の教室に行くと、とある生徒が志望校の話をしているのが耳に入った。国内でトップの大学に行くと息巻いている。前回の模試の偏差値が36、今回の期末試験も全科目赤点だったその生徒が届くとは到底思えない。

「お前には無理だ。志望校を変更しなさい。」

喉まで出かかった言葉をグッと飲み込む。

次の言葉が出てこない。

「お、頑張れよ!」無責任ではないだろうか。

「俺が連れて行ってやる!」約束出来ない。

瞬間、理解した。自分の中には「伝えたい人生」が存在しない。熱意ある若者に届けたい言葉が存在しない。

 

今までつけていた仮面に、小さなヒビが入るのを感じた。

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受験の目標は、もちろん合格です。ですが、受験を通じて得られるものは志望校の学生証だけではありません。「やればできる」その自信こそが受験で得られる最高の宝です。「やらなくてもできる」「なんとかなる」そういった過信を捨て、「やればできる」「なんとかする」そういった自信を持つ。どんな困難にも前向きに取り組む事が出来る本当の意味での強い人になってほしいと、SIEGは願っています。

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